東京地方裁判所 昭和53年(特わ)1122号 判決 1978年8月22日
本店所在地
東京都武蔵野市境一丁目七番八号
株式会社 吉野
(右代表者代表取締役 皿谷一三)
本籍
東京都渋谷区代々木四丁目三二番地
住居
東京都武蔵野市吉祥寺東町二丁目四二番七号
会社役員
皿谷一三
昭和八年一月二八日生
右の者らに対する法人税法違反被告事件につき、当裁判所は、検察官乙部二郎出席のうえ審理を遂げ、次のとおり判決する。
主文
被告人株式会社吉野を罰金一五〇〇万円に、被告人皿谷一三を懲役一年にそれぞれ処する。
被告人皿谷一三に対し、この裁判確定の日から三年間、右刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人株式会社吉野(以下「被告会社」という。)は、肩書地に本店を置き、受託による木材の市売事業等を目的とする資本金六〇〇〇万円(昭和五一年四月二四日以前は三〇〇〇万円)の株式会社であり、被告人皿谷一三(以下「被告人」という。)は、被告会社の代表取締役としてその業務全般を統括していたものであるが、被告人は被告会社の業務に関し法人税を免れようと企て、受託販売差益(別紙(一)ないし(三)の修正損益計算書上の科目としては「<1>雑収入」)を除外して簿外預金を蓄積する等の方法により所得を秘匿したうえ、
第一 昭和四九年四月一日から同五〇年三月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が六八六七万三八八七円あった(別紙(一)の修正損益計算書参照)のにかかわらず、同年五月三一日、東京都武蔵野市吉祥寺本町三丁目二七番一号所在の所轄武蔵野税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が二七六九万六〇八四円でこれに対する法人税額が九五四万六四〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(昭和五三年押第一〇六三号の符号一)を提出し、そのまま納期限を徒過させ、もって不正の行為により被告会社の右事業年度における正規の法人税額二五八九万〇六〇〇円(税額の算定は別紙(四)の一計算書参照)と右申告税額との年度に六三四万四二〇〇円を免れ、
第二 昭和五〇年四月一日から同五一年三月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が七九六一万五七六七円あった(別紙(二)の修正損益計算書参照)のにかかわらず、同年五月三一日、前記武蔵野税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が二四八五万六七九四円でこれに対する法人税額が八三〇万八二〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(前同号の符号二)を提出し、そのまま納期限を徒過させ、もって不正の行為により被告社の右事業年度における正規の法人税額三〇一六万五三〇〇円(税額の算定は別紙(四)の二計算書参照)と右申告税額との差額二一八五万七一〇〇円を免れ、
第三 昭和五一年四月一日から同五二年三月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が八九八六万五〇三三円あった(別紙(三)の修正損益計算書参照)のにかわらず、同年五月三〇日、前記武蔵野税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が三二四六万六六七〇円でこれに対する法人税額が一一二三万六二〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(前同号の符号三)を提出し、そのまま納期限を徒過させ、もって不正の行為により被告会社の右事業年度における正規の法人税額三四一六万二七〇〇円(税額の算定は別紙(四)の三計算書参照)と右申告税額との差額二二九二万六五〇〇円を免れ
たものである。
(証拠の標目)
第一 判示冒頭事実を含む判示事実全般につき、
一、被告人の当公判廷における供述及び検察官に対する供述調書三通(乙2ないし4)
一、穂積隆三、辻本文則、村上正春(二通)の検察官に対する各供述調書(甲一40ないし43)
一、登記官作成の登記簿謄本(甲一1)
第二 別紙(一)ないし(三)の各修正損益計算書掲記の各勘定科目別「当期増減金額」欄記載の数額のうち、
(イ) 雑収入(各<1>)、受託手数料(各<2>借方欄)、荷請手数料(各<4>)、収入利息(各<5>)、送金料収入((一)<44>、(二)<45>、(三)<46>、)につき、
一、大蔵事務官作成の調査書(雑収入除外額について)(甲一3)
ロ 受託手数料((三)<2>貸方欄)、収入利息((三)<5>貸方欄)、委託手数料((三)<6>)、事故費((一)(三)<7>)、仕入((三)<11>)、支払利息((二)(三)<41>貸方欄)、割引利息((二)<42>)、雑損((二)<44>)、仕切売却益((二)<47>)につき、
一、大蔵事務官作成の調査書(受託手数料)(甲一4)
一、同調査書(収入利息)(甲一5)
一、同調査書(委託手数料)(甲一6)
一、同架空事故費調査書(甲一7)
一、同架空仕入調査書(甲一8)
一、同架空支払利息調査書(甲一19)
一、同架空割引利息調査書(甲一20)
一、同架空雑損失調査書(甲一22)
一、同仕切売却益調査書
(ハ) 預金利息((一)<45>、(二)<48>、(三)<49>)につき、
一、大蔵事務官作成の預金利息調査書(甲一24)
一、同調査書 (普通預金の各期末残高及び受取利息)(甲一25)
一、同調査書 (通知預金の各期末残高及び受取利息)(甲一26)
一、同調査書 (定期積金の各期末残高及び受取利息)(甲一27)
一、同定期預金調査書(甲一28)
(ニ) 家賃収入 ((二)<46>、(三)<47>、)につき
一、大蔵事務官作成の調査書 (家賃収入) (甲一29)
(ホ) 株式売却益((一)<49>)、株式売却損((三)<43>)につき
一、大蔵事務官作成の株式調査書 (甲一21)
(ヘ) 不動産売却益((二)<63>)につき
一、大蔵事務官作成の調査書(土地)(甲一31)
(ト) 交際費((一)<20>、(二)(三) )、交際費限度超過((一)<60>、(二)(三)<61>)につき
一、大蔵事務官作成の調査書(交際費) (甲一16)
一、同交際費損金不算入調査書 (甲一35)
(チ) 役員賞与((一)<14>、(二)<15>、(三)<14>)従業員賞与((一)<15>、(二)(三)<16>)、役員賞与損金不算入((一)<59>、(二)(三)<60>)につき
一、大蔵事務官作成の調査書(賞与について) (甲一11)
一、同役員賞与損金不算入(公表分)調査書 (甲一33)
一、同調査書(役員賞与損金不算入) (甲一34)
(リ) 給料((一)<12>、(二)<13>、(三)<15>、)、福利厚生費((三)<23>)につき、
一、村上正春作成の答申書(裏金から支出したその他の経費について) (甲一10)
一、大蔵事務官作成の福利厚生費調査書 (甲一17)
(ヌ) 報酬((一)<13>、(二)<14>、(三)<13>)につき
一、萩原昌次作成の簿外報酬及び給料調査書 (甲一9)
(ル) 雑給((一)<62>、(二)(三)<17>)につき、
一、大蔵事務官作成の調査書(雑給) (甲一12)
一、村上正春作成の答申書(簿外経費について) (甲一13)
(ヲ) 割戻金((一)<16>、(二)(三)<18>)につき
一、大蔵事務官作成の調査書(津田清二に対する割戻額について) (甲一14)
(ワ) 支払利息((一)<39>、(二)(三)<41>借方欄)につき、
一、大蔵事務官作成の借入金調査書 (甲一18)
(カ) 諸税公課((二)(三)<19>)につき、
一、大蔵事務官作成の諸税公課調査書(甲一15)
(ヨ) 貸倒金((二)<43>)につき
一、大蔵事務官作成の貸倒金調査書(甲一23)
(タ) 価格変動準備金繰入((一)(二)<55>、(三)<56>)、価格変動準備金戻益((二)<51>、(三)<54>)につき、
一、武蔵野税務署長作成の証明書 (甲一32)
(レ) 事業税認定損((一)<63>、(二)<64>、(三)<63>)につき、
一、大蔵事務官作成の調査書(未納事業税) (甲一36)
第三 別紙(一)ないし(三)の各修正損益計算書掲記の各勘定科目別「公表金額」欄記載の数額及び過少申告の事実につき、
一、押収にかかる被告会社の法人税確定申告書三綴(昭和五三年押第一〇六三号の符号一ないし三)
一、検察官作成の昭和五三年五月二三日付捜査報告書 (甲一37)
(法令の適用)
法律に照すと、判示各所為は、各事業年度ごとに法人税法第一五九条第一項(被告会社については、さらに同法第一六四条第一項)に該当するところ、被告会社については情状に鑑み同法第一五九条第二項を適用し、被告人については所定刑中懲役刑を選択することとし、以上は刑法第四五条前段の併合罪であるから、被告会社については同法第四八条第二項により合算した金額の範囲内において罰金一五〇〇万円に、被告人については同法第四七条本文、第一〇条により犯情最も重いと認める判示第三の罪の刑に法定の加重をした刑期範囲内において懲役一年にそれぞれ処し、被告人に対し同法第二五条第一項を適用してこの裁判確定の日から三年間、右刑の執行を猶予することとし、主文のとおり判決する。
(裁判官 半谷恭一)
別紙(一) 修正損益計算書
株式会社 吉野
自昭和49年4月1日
至昭和50年3月31日
<省略>
<省略>
<省略>
<省略>
<省略>
別紙(二) 修正損益計算書
株式会社 吉野
自昭和50年4 1日
至昭和51年3月31日
<省略>
<省略>
<省略>
<省略>
<省略>
別紙(三) 修正損益計算書
株式会社 吉野
自昭和51年4月1日
至昭和52年3月31日
<省略>
<省略>
<省略>
<省略>
別紙(四) ほ脱税額計算書 (単位 円)
株式会社 吉野
(1) 自昭和49年4月1日
至昭和50年3月31日
<省略>
<省略>
(2) 自昭和50年4月1日
至昭和51年3月31日
<省略>
<省略>
(3) 自昭和51年4月1日
至昭和52年3月31日
<省略>
(4) 法人税額合計
<省略>